ドル円FX敗残兵の戦後

ドル円で借金を作った人のその後の人生を追います

敗戦と復興への一歩

2022.3.28 この日ドル円は約6年半ぶりの高値を更新し1ドル125.11円を記録した。

1人の男がまさに膝から崩れ落ちる事など気にするそぶりも見せずに。


今後このような失敗を繰り返さないような反面教師として、同じく相場に敗北し泥水を啜っている同志達の支えの一助になれるように、新しく散った武士達への道標として、そしてもし私が命を断ったとき生きて足掻いていたことを残すために何か残そうと思い立った。

 

これを残すことで誰かの助けになれば幸いである。


私は現在20代後半、独身彼女ありのサラリーマンだ。

趣味は旅行とバイクで特にバイクはナンバーなし含めて6台所有している。

他に半年前に購入した車を1台所有している。

実家から1時間程度、会社まで15分程度のところで一人暮らしをしている。


相場との出会いは2年前、丁度新型コロナウイルスが蔓延し始め、112円に急騰、そこから101円まで急落した後再び111.5円と乱高下し少し落ち着いたあとだった。

当時現物買いで為替をやろうとしていた私に、信用取引、所謂FXとEA、自動売買ソフトを教えてくれた先輩がいた。

スマートフォンを職場に持ち込めない今の会社で勤める私に自動売買は大変魅力的だった。

リスクを一通り勉強した後、物は試しにと10万円を原資に動かし始めたところ、毎日コツコツ数百円〜2,000円程度増えていき満足していた。

使っていたEAはナンピンマーチン法という手法で、相場に対し逆張りしていくものである。

ドル円で例えれば110から109、108円と落ちて行くにつれ買い注文を入れていき、少し上がって利益が出た時に決済するというものである。

資金は順調に2倍、3倍と増えていき、それに伴って取引する量、lotも増えていった。

このナンピンマーチン法、そしてlotを増やしたことが敗北の主原因であった。


ドル円は上下を繰り返しながら下落の一途を辿りコロナショック以来の102.6円目前に迫っていた。

そして2021.1.6を境にドル円相場は大きな転換を迎える。

下落から一点上昇に転じたのである。

日足レベルでの大きな押し目も無く、丸一年後の2022.1.6には116.2目前と14円も上昇していたのである。

押し目が小さいので含み益にならないから、売り注文だけがどんどん重なっていく。

含み損も膨れ上がる。

さらに3月に入り米金利の引き上げが発表されると急騰、28日には125円を超えた。

この時の含み損は約800万円。

いつか下がる、ここが天井だと言い聞かせて資金を投入し続けた。

3月に入ってからはクレカでの資金投入をしてしまった。完全に判断力を失っていたのである。これも大きな過ちである。

冷静に判断しなければならない相場で、下がるための材料を探し、118円をつけたら大きく押す、120円をつけたらトレンドが変わると信じた。

週足のレジスタンスがある、前回高値は越えられないと盲信した。


その結果は強制ロスカットだった。


貯金は全て入金してしまい、クレカによる入金も上限の300万円まで達して尚下がる気配を見せない相場に対し、それでも114.5円までは耐えられるからと出社した私は気が気でなかったものの、本職も忙しく相場を見ることができなかった。

いや、例え見ることができてももう打つ手はないのである。


20時ごろ、退社して相場を確認した。

ロスカットされていた。

これまでにない動悸がした。

スマートフォンを持つ手が震えた。

そして膝から崩れ落ちた。

800万円を失ったのである。

このうち150万円程度は利益であったから、正確には650万円を失った。

目の前が真っ暗になった。


さらに間の悪いことに、リスク分散とし為替の前に行っていたマンション投資が年明けに躓き、毎月アパートの家賃と投資マンションの家賃を払わなければならないのであった。


正直死のうと思った。


死ねば楽になると思った。

マンションの借金は無くなるし、生命保険もあるから借金はなくなり親にも残せるものがある。そしたら楽になるし誰にも迷惑をかけない。


けど死ねなかった。怖くなった。

親が絶対悲しむ、職場にも迷惑がかかる、彼女にもトラウマができてしまうかもしれない。


だから生きる手段を探した。

自己破産を調べた。

FXで対象になるケースは稀であり、働けないなどよっぽどの理由がないと難しいらしい。

それにお金を借りたのに返さないというのは、自己破産が認められたとしても今後おひさまの下を歩けないと思った。


やはりコツコツ返すしかない。

幸い職にもついており固定の収入もある。

健康な体もある。


この二週間は頑張って生きて返そうという躁状態と、無理だから死のうという鬱状態がランダム交互にやってきて酷く眠れない日々が続いた。

でも何もしなければ借金は減らない。

二週間経ってようやく覚悟ができた。


その一歩をここに書き残そうと思う。

そうやって一歩ずつ進めて借金を返して、それが終わったらこれからは現物買いによる取引で少ないけどコツコツ稼ごうと思う。


まずは通勤時間は増えるものの家賃を浮かせるため実家に戻ろうと思う。

通勤時間は増えるが致し方ない。


明日は不動産屋に行ってこようと思う。